牛乳やヨーグルトの成分が炎症を抑制 血管を改善し脳の活性化にも効果的

2019年02月12日
 牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、タンパク質やカルシウムの供給源になるだけではない。牛乳やヨーグルトに含まれる成分に「炎症を抑える」「血管内皮を改善する」「認知機能の低下を抑制する」効果を期待できる成分が含まれることが最近の研究で分かってきた。糖尿病や高血圧などの治療に役立てられる可能性がある。
母乳に含まれる「ラクトフェリン」が炎症を抑制
 「ラクトフェリン」は、牛乳などに含まれる鉄結合性の糖タンパク質で、さまざまな生理機能があることが報告されている。「炎症を抑える」「抗菌活性がある」「腸内細菌のバランスを整える」「内臓脂肪を減らす」などの効果があると考えられている。

 「ラクトフェリン」は、母乳、とくに出産後に分泌される初乳にもっとも多く含まれているおり、赤ちゃんの健康維持のために必要な成分とみられている。ヒトの初乳には100mLあたり600〜800mg、出産後3週間以降の常乳には約200mgのラクトフェリンが含まれる。殺菌される前の牛乳にも含まれるが、その濃度はヒトの母乳の10分の1程度だ。

 慶應義塾大学の研究グループは、「ラクトフェリン」に炎症を抑える働きがあることを、研究で確かめた。これまで風邪、胃腸炎など、身近なウイルス感染症に対する予防効果の研究が行われてきた。

 「炎症」とは生体が内外から有害な刺激を受けた際に起こす反応であり、感染症、自己免疫疾患、血栓症、動脈硬化などさまざまな疾患に深く関わっている。

 白血球の一種である「好中球」は、細菌に感染したときにその細菌を殺す役割を担っている。好中球は細菌を包むようにして殺すメカニズムは「好中球細胞外トラップ(NETs)」と呼ばれ、感染から防御する重要な働き働きとみられている。

 一方で、NETsが過剰に産生されたり、うまく分解されないなどしてコントロールが不全になると、さまざまな炎症性疾患、自己免疫疾患、血栓性疾患につながることが分かってきた。また、糖尿病患者の傷が治りにくい原因にも、NETsが関与していると考えられている。

 研究グループは、蛍光ラベルで生きた細胞をリアルタイムに観察するシステムを用いて、好中球の動きを調べた。その結果、「ラクトフェリン」がNETs放出を抑制し、炎症を抑えることを突き止めた。

 炎症性疾患の治療にはステロイドや免疫抑制薬などの薬剤が用いられているが、副作用があることが課題になっている。「ラクトフェリン」は、NETsに関連するさまざまな炎症性疾患に対する、副作用のない新たな治療薬となる可能性があるという。

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乳由来の「ラクトトリペプチド」が脳の活性化に効果的
 加齢とともに血管も老いていく。血管の老化は一般的に男性で40歳、女性は50歳を過ぎると加速する。老化した血管は硬く、狭くなり、動脈硬化の状態になりやすい。動脈硬化は高血糖、高血圧、脂質代謝異常などによって加速し、悪化すると心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす。

 動脈硬化に効果があると注目されているのが、乳由来の成分である「ラクトトリペプチド」だ。「ラクトトリペプチド」は、ヨーグルトなどの発酵乳に含まれる乳由来のアミノ酸が3つ結合したタンパク質。血圧の上昇を抑える効果があり、特定保健用食品にも使われている。

 ペプチドは、口から摂取すると消化液に分解されるが、「ラクトトリペプチド」は途中で分解されにくく、腸管から吸収されて血液中で働き、血圧上昇の原因となるアンジオテンシン変換酵素の働きを抑える作用がある。

 また、血管内皮細胞から一酸化窒素の分泌を増やし、血管を拡張し、柔軟性を向上させる働きもある。「ラクトトリペプチド」の効果は、有酸素運動を同時に行うことで高められるという。

 筑波大学の研究グループは、発酵乳に含まれる「ラクトトリペプチド」が脳の活性化に効果的であることを解明した。認知症の発症リスクが高い糖尿病患者、高血圧患者、ならびに軽度認知障害患者などが「ラクトトリペプチド」を摂取すると効果を期待できるという。

 研究グループは、生体への透過性が高い近赤外光を用いて血流量の変化を計測するイメージング装置を用いて、明らかな疾患のない中高年者64人を対象に、「ラクトトリペプチド」の脳内での働きを調べた。

 脳の神経活動が起きると、活動部位で、酸素と結合した酸素化ヘモグロビンが増えるので、その濃度を測定することで脳活性化の状態を観察できる。「ラクトトリペプチド」を8週間摂取したグループでは、左右の前頭前野の脳活性化が向上していることが分かった。

 研究グループはこれまで、「ラクトトリペプチド」の摂取と運動を組み合わせることで、血管内皮機能を改善する効果が増すことを確かめてきた。今回の研究で、世界ではじめて、脳の活性化にも効果的であることを明らかにした。老化にともなう動脈硬化や脳活性の低下を抑制し、認知症の発症を予防することは非常に重要だ。

慶應義塾大学医学部 総合診療科
Lactoferrin Suppresses Neutrophil Extracellular Traps Release in Inflammation(EBioMedicine 2016年7月14日)
筑波大学体育系スポーツ医学 前田研究室
Combined effect of lactotripeptide and aerobic exercise on cognitive function and cerebral oxygenation in middle-aged and older adults(American Journal of Clinical Nutrition 2019年1月9日)

[Terahata]

  
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