日本健康運動研究所
女性のライフステージと、体と心の健康運動

はじめに

肩こりは、女性の20代~50代において自覚症状の1位、60代・70代においても2位を占めると報告されています(※1)。つまり、成人期、中年期、高齢期と3つのライフステージにかけて、多くの女性の方が肩こりの自覚があるということです。実際に、長年に渡って肩こりに悩まされている方も多いのではないでしょうか。

肩こりの部位としては、大きく分類すると、頸(くび)のつけ根から頸~肩、および肩甲骨周囲に多く見られます。

一般的に「こり」は、長時間の同一姿勢や重量物を持つことで、筋肉が緊張して血流が低下し、その結果、筋肉が硬くなったり、動かしづらくなることをいいます。

肩こりの運動を5種目ご紹介します。

硬くなり、動かしづらくなった筋肉をほぐしながら、少しずつ動かしていきましょう。

腕や手にしびれがある、あるいは腕や手の力が入らない状態は、運動により症状が悪化する場合がありますので、実施を控えてください。

中年期になると、「五十肩(肩関節周囲炎)」になる方がおられます。

肩関節が痛み、腕を上方に挙げる時などで動きに制限が出る場合があります。あまり動かさないでいると、肩関節の動きが悪くなるため、痛みが増強しない程度で、回数を減らす、動かす範囲を小さくするなど、ご自分で調整をしながら、可能な範囲で運動を行ってください。五十肩の症状が長期に続く、安静時でも痛みがある時は、医療機関を受診してください。

※1:厚生労働省 国民生活基礎調査(平成28年)「性・年齢階級別にみた症状別自覚症状のある者(有訴者)率(人口千対)」

肩こりになりやすい生活習慣

  • 1日あたりのパソコンやスマートフォンの使用時間が長い
  • 子どもを抱っこする時間が長い、あるいは、抱っこする機会が多いと思う
  • 無意識のうちに頸(くび)や肩に力が入っている、あるいは、肩がすくんでいると思うことが多い
  • 重い荷物を肩にかけて持つことが多い
  • 日常生活で背中が丸まった姿勢が多く、胸を張る姿勢を行う機会がほとんどない

肩こりのセルフチェック(運動前後での比較、運動開始前と運動継続後との比較)

A.こりのチェック

頸(くび)のつけ根や後ろ側、肩の筋肉を手指3本で触れたり、軽く押してみる。

  • ※可能であれば、肩の下側や肩甲骨周囲も行う
  • ※左右両側とも行い、違いを確認する
  • ※頸の前側には頸動脈があるので、軽く触れる程度にして押さない、圧迫しない
いずれかの部位が「こっている」「張っている」「押すと痛い」などの感覚がある

B.両腕まわし(可能であれば、鏡を見ながら行う)

頸(くび)と肩の力を抜いた状態で、両腕を曲げながら前方から後方へとゆっくり大きくまわす。

  • ※左右の動きに違いがあるかを確認する
  • ※動かすことで痛みが強く出る場合は中止する
  1. 腕を上へ挙げたり、後ろへまわす際、頚(くび)や肩が大きくすくむ、あるいは力が入る
  2. 後方へまわす時「動かしにくい」、あるいは自分が想像していたよりも「動きが小さい」と感じる

肩こり〔頸(くび)~肩、肩甲骨周囲〕の運動

(1)頸スイング

  1. イスに座る ※立って行ってもよい
  2. 軽くうつむく
  3. 両肩の力をしっかり抜き、両腕は力を抜いて体側に置く
    意識:頸(くび)が長くなっている
  4. 顔を動かしながら、頸(くび)を左から右、右から左へとゆっくりとスイングさせる
    意識:頸が長く伸びたままで動かすようにする
  • 左右5往復程度を目安に行う
  • より強く大きく動かしたい場合
    • 両指を組んだ状態で両手を後頭部に置き、腕の重さを加えながら行う
      ※両腕は力を抜く
    • 背中を丸めて頸を曲げ、目線はおへそを覗き込む

(2)肩上げ下げ&背中丸め伸ばし

  1. 腰幅に立ち、膝を軽く曲げた状態で背すじを伸ばして立つ
    両腕は体側に、両手に水の入ったペットボトルやダンベルを持つ
    ※イスに座って行ってもよい
  2. 両肩をゆっくりと引き揚げる
    意識:頸の長さを徐々に縮めていく
  3. 両肩をゆっくりと下ろしていく 意識:頸を長く伸ばしていく
  4. 両腕を伸ばしたまま前方へ移動させ、左右の手の甲同士を合わせながら背中を丸める 意識:左右の肩甲骨の内側が遠ざかる
  5. 両腕を伸ばしたまま体側から若干後方へ移動させ、手の甲は内側へ向けて胸を張る 意識:左右の肩甲骨の内側が引き寄せられる
  6. 1の姿勢に戻す
  • 10回1セットを目安に、慣れてきたら2~3セット行う
  • 肩甲骨周囲の筋肉は小さいものが多いため、水の入ったペットボトルやダンベルは重くしすぎない(連続して10回できる程度を目安にする)

(3)肩まわし(シュラッグ)

  1. 腰幅に立ち、膝を軽く曲げた状態で背すじを伸ばして立つ
    両腕は体側に、両手に水の入ったペットボトルやダンベルを持つ
    ※イスに座って行ってもよい
  2. 両腕を上体の前に置き、軽く腕を曲げながらゆっくりと肩を引き揚げる
    意識:肩を引き揚げる際、肩甲骨から動かし、左右の肩甲骨の内側が遠ざかる
  3. 肩を引き揚げた状態で姿勢を保持する
  4. ゆっくりと腕を後方に回しながら、徐々に胸を張り、肩と腕を下ろす
    意識:胸を張る際、肩甲骨から動かし、左右の肩甲骨の内側が引き寄せられる
  • 10回1セットを目安に、慣れてきたら2~3セット行う
  • 肩甲骨周囲の筋肉は小さいものが多いため、水の入ったペットボトルやダンベルは重くしすぎない(連続して10回できる程度を目安にする)

(4)肩まわし前挙げ(外まわし・内まわし)

  1. 腰幅に立ち、膝を軽く曲げた状態で背すじを伸ばして立つ
    ※イスに座って行ってもよい
  2. 両腕を体側に置き、両手首を手前に曲げる(可能であれば90度程度)
  3. 両腕を5回程度、外まわしをしながら、前方向に肩の高さまで挙げていく
    意識:腕は大きくまわす必要はなく、あくまで肩甲骨から動かす
  4. さらに両腕を5回程度、外まわしをしながら、上方(天井方向)へ挙げていく
    ※両腕を肩の高さまで挙げてみて、痛みなどがなくまだ可能であれば行う
    ※顔はまっすぐ正面を向いたままでよい
  5. 肩の高さあるいは天井付近まで挙げた両腕を外へまわしながら、体側までゆっくりと戻す
    ※肩の高さの場合は5回程度、天井付近の場合は10回程度まわす
  • 内まわしについても同様に行う
  • 1~5を3~5回程度行う
  • 左右の動きに違いがある場合、痛みが増強しない程度で調節しながら、動かせる高さまで行うとよい

(5)肩まわし横挙げ(外まわし・内まわし)

  1. 腰幅に立ち、膝を軽く曲げた状態で背すじを伸ばして立つ
    ※イスに座って行ってもよい
  2. 両腕を体側に置き、両手首を手前に曲げる(可能であれば90度程度)
  3. 両腕を5回程度、外まわしをしながら、横方向(側方)に肩の高さまで挙げていく
    意識:腕は大きくまわす必要はなく、あくまで肩甲骨から動かす
  4. さらに両腕を5回程度、外まわしをしながら、上方(天井方向)へ挙げていく
    ※両腕を肩の高さまで挙げてみて、痛みなどがなくまだ可能であれば行う
    ※顔はまっすぐ正面を向いたままでよい
  5. 肩の高さあるいは天井付近まで挙げた両腕を外へまわしながら、体側までゆっくりと戻す
    ※肩の高さの場合は5回程度、天井付近の場合は10回程度まわす
  • 内まわしについても同様に行う
  • 1~5を3~5回程度行う
  • 左右の動きに違いがある場合、痛みが増強しない程度で調節しながら、動かせる高さまで行うとよい

日常生活でできる姿勢の意識

上半身(頭頂部~骨盤上部)の姿勢を自分で整える

次の1つ1つの動作を意識しながら、体の力を抜いて確実に行う

  1. 天井から上体が吊るされているイメージで、上体をまっすぐに、頭頂部から上方向へゆっくりと伸ばす
  2. 顎を手前に引き寄せる
  3. 肩は可能な限り、下方へ降ろす
  4. 3を行いながら、頸が長く伸びていることをイメージする
  5. 両腕は体側へ降ろす(手の平は内側、時々前方へ向けても良い)
  6. 左右の肩甲骨の内側を引き寄せる、その結果、胸が広がる

もくじ

ステージ 成人期
20〜39歳
中年期
40〜64歳
高齢期
65歳〜





肩こり、肩の痛み〔50代:肩こりの他、五十肩(肩関節周囲炎)〕
腰痛、腰のだるさ(50代~:腰部脊柱管狭窄症)
膝痛(50代~:変形性膝関節症)
脚力低下→全身体力低下→転倒→骨折→寝たきり
骨粗鬆症→転倒骨折(手首や大腿骨)、脊椎圧迫骨折
生活習慣病(肥満、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常)
→冠動脈疾患、脳血管疾患、合併症
月経前症候群(PMS)(~50代前半)
更年期症状(~50代前半)
体型・体調変化(出産に伴う)
脚のだるさやむくみ
※本図の各項目は一般的な内容を挙げており、各々、個人差や個体差があります

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